図形の証明問題を前にして手が止まってしまうとき、原因はおおむね次の3つのどれかに当てはまります。
- 道具が手元にない:定義・性質・条件が正確に言えないため、根拠として書けない。
- ゴールから逆算していない:何を示せば結論になるのかを決めないまま書き始めている。
- 書き方の型がない:考えはわかっていても、仮定・根拠・結論の順に文章にできない。
この記事では、この3点を順に解消していきます。まず道具となる定義・性質・条件を整理し、次に書き方の型を確認し、最後に例題で証明を完全な形で書いてみます。
平行四辺形の定義と性質
定義:2組の対辺がそれぞれ平行な四角形を平行四辺形といいます。
この定義から、三角形の合同を使って次の性質が導かれます。証明の中では「平行四辺形の〜から」という根拠として使います。
- 2組の対辺はそれぞれ等しい。
- 2組の対角はそれぞれ等しい。
- 対角線はそれぞれの中点で交わる。
平行四辺形になるための条件(5つ)
「ある四角形が平行四辺形であること」を示すときは、次のどれか1つが成り立つことを示します。
- 2組の対辺がそれぞれ平行である。(定義)
- 2組の対辺がそれぞれ等しい。
- 2組の対角がそれぞれ等しい。
- 対角線がそれぞれの中点で交わる。
- 1組の対辺が平行で、その長さが等しい。
性質と条件は似ていますが、向きが逆です。性質は「平行四辺形である → 〜が成り立つ」、条件は「〜が成り立つ → 平行四辺形である」。証明でどちらを使っているのかを意識することが、正確な記述への第一歩です。なお、5の条件は「1組の対辺」について、平行と長さが等しいことの両方がそろって初めて使えます。
証明の書き方の型:仮定→根拠→結論
証明は、次の流れで組み立てます。
- 何について調べるかを宣言する:「△ABEと△CDFにおいて」など。
- 等しいことを1つずつ、根拠をつけて書く:「仮定より」「平行四辺形の対辺は等しいから」「平行線の錯角は等しいから」など。①②③と番号をふります。
- 使う定理・条件を明示する:「①②③より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいから」。
- 結論を書く:「△ABE≡△CDF」「よって、四角形AECFは平行四辺形である」。
書き始める前に、結論から逆にたどって「何が言えればよいか」を決めておくと、途中で迷いにくくなります。
例題1 平行四辺形の性質を使って合同を示す
平行四辺形ABCDの対角線AC上に、AE=CFとなるように点E、Fをとります。このとき、△ABE≡△CDFであることを証明しなさい。
方針:対辺が等しいこと(性質1)と、AB∥DCから得られる錯角を使えば、「2組の辺とその間の角」がそろいます。
【証明】
△ABEと△CDFにおいて
仮定より AE=CF …①
平行四辺形の対辺は等しいから AB=CD …②
AB∥DCより、平行線の錯角は等しいから
∠BAE=∠DCF …③
①、②、③より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいから
△ABE≡△CDF
③の∠BAEは∠BAC、∠DCFは∠DCAと同じ角です。直線ACがAB、DCと交わってできる錯角なので、等しいと言えます。この合同から、合同な図形の対応する辺は等しいので BE=DF も導けます。
例題2 平行四辺形であることを示す
平行四辺形ABCDの対角線の交点をOとします。線分BO上に点E、線分DO上に点Fを、BE=DFとなるようにとります(E、FはOと重ならないものとします)。このとき、四角形AECFは平行四辺形であることを証明しなさい。
方針:四角形AECFの対角線はACとEFで、どちらもOを通ります。AO=CO、EO=FOが言えれば、条件4「対角線がそれぞれの中点で交わる」が使えます。
【証明】
平行四辺形の対角線はそれぞれの中点で交わるから
AO=CO …①
BO=DO …②
仮定より BE=DF …③
EO=BO-BE、FO=DO-DF だから、②、③より
EO=FO …④
①、④より、四角形AECFは対角線がそれぞれの中点で交わるから、
四角形AECFは平行四辺形である。
①②は「平行四辺形ABCDの性質」、最後の一文は「平行四辺形になるための条件」です。同じ「対角線が中点で交わる」という内容でも、前半と後半で使い方の向きが逆になっていることを確認してください。
よくある減点ポイント
- 根拠が抜けている:「AB=CD」だけで、なぜ等しいかが書かれていない。
- 平行の記述がない:「錯角は等しい」とだけ書き、どの直線が平行なのか(AB∥DC)を示していない。
- 合同条件の言い方が不正確:「2辺と1角が等しい」と書くと、角が2辺の間にあるかどうかがわからず、条件として不十分です。
- 頂点の対応がずれている:△ABE≡△CDFで、AとC、BとD、EとFが対応していることを、順番どおりに書く。
- 結論を根拠に使っている:証明したいこと(たとえば「AECFは平行四辺形だから」)を途中で使ってしまう。
- 図の見た目に頼っている:「図より明らかに等しい」は根拠になりません。
証明を書けるようになるための練習の順序
最初は、教科書の証明を写して、各行の根拠に下線を引くことから始めるとよいでしょう。次に、根拠の部分を隠して自分で言えるか確かめ、最後に何も見ずに書きます。定義・性質・条件を正確に言えること、そして仮定→根拠→結論の型で書くこと。この2つがそろえば、証明は「ひらめき」ではなく「手順」で書けるようになります。
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